道場破り

2/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「この中でわたくしよりも強いと言う方はいらっしゃらないの?男性方も、なにをそんなに怯えていらっしゃるの?」 小さな子供が、年の離れた部長をひとえに投げ飛ばす。割と成績はよかった部長をだ。 「まぁ、なんて弱い方たち。これでは個人戦の練習にもなりませんわ」 お嬢様なのか、言葉が丁寧語からお嬢様言葉になる。 「仕方がありませんわね。部長にはわたくしがなりますわ」 れんこは一人で喋り続けた。 「遅れてすみません。補習があって…」 遅れて道場に入ってきたのは、ひょろっとした雰囲気のある男子高校生だ。 「え?なにかあったんですか?」 「まぁ、あなたどなた?こちらの皆さん弱くて。わたくしが今から部長になるところですのよ?」 「え?部長?どういうことですか?」 「皆さんが弱いんです。歳はわたくしよりも上なのに残念でなりませんわ」 部長は苛立ちで顔を歪めるしかなかった。 「ちょっと着替えてきます」 「まぁ、あなたは柔道部なのですか?そんな体型で?残念ですわ」 「…お嬢さん、静かにそこで待っていて下さい」 なにかしら?とれんこは小首をかしげた。 それは、お嬢様らしい仕草である。 「お待たせしました。試合がしたいんでしょう?」 「ええ。もちろん。まぁ、あなたなどたやすいですわ」 男子高校生、(たけし)は…ものの数秒で、れんこを投げ飛ばした。 「あのね、先輩は敬うのが常識。そんなこともわからない?」 「あ、あの…」 「お嬢様だかなんだか知らないけど、入部したいんならそう言えばいいでしょ?」 わなわなと彼女は震えて、そのまま立ち去った。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!