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三.スペシャリストを呼びました。
秘境とも言えるその小島に不釣り合いな、誰もが知る銀のエンブレムも眩しい大型SUVに、ユウタとサヤカは半ば押し込まれるように乗せられた。
チャノベ島ガイドのスペシャリストを紹介すると言って、どこかに日本語で電話をかけながら車を走らせるタクミと、日本での居所や仕事などをずけずけと聞いてきては微笑んでいる助手席のキョウカに、早くも完全にイニシアチブを取られた感を覚え、二人が引きつった笑みを浮かべながら曖昧な受け答えを繰り返していると、車はやがて自然素材で手作りされたチャノベ式の小さな住居に辿り着いた。
「モンガ!いるか!?」
車を降りたタクミが大声で呼ぶと、長いドレッドヘアを揺らし太い眉毛の小柄で丸々とした男があくびをしながら住居から姿を現し、
「寝てたしめんどくさいんだけど……まぁタクミさんの頼みじゃ断れねぇな、太客だもんな」
と遠慮の無い口調でつぶやくように答えた。
「はは、今日も奮発するから、よろしく頼むよ。
早速だけど、さっき電話で話した『チャノベの宝石』、何か心当たりはあるかい?」
「そうだね……正直、全然わからないよ。
めんどくさいから長老に聞いちゃおうか」
「おっ!?何だって!?
とうとう長老に会わせてくれるのか!?
すごいな、どういう風の吹き回しだ?」
「別に……マジでわかんなくてめんどくさいからさ……」
「はは、長老かぁ!
キョウカ、ミノル!
今日はツイてるぞ!」
「本当ですわねぇ、素晴らしいですわ。
これも偶然お二人に出会えたおかげですわねぇ?」
助手席のシート越しに振り返って微笑むキョウカに、
「はぁ……」
とまた曖昧な返事をしつつ、
「ねぇ、あれのどこがガイドのスペシャリストなのよ、いきなり完全放棄して長老に丸投げしたわよ?」
「いや、『宝石』ってそのぐらいレアなものなのかも知れないし……」
「でもマサ君の話しぶりだとまぁまぁ普通に手に入る物って感じだったけど」
「うぅーん、まぁ、どっちにしろ長老っていうぐらいの人に会えばわかるんだろうから……」
などとやっているとタクミが車に戻り、モンガなるドレッド男もバックドアを開きトランクに入り込んであぐらをかいた。
「ど、どうも……よろしくお願いします……」
ユウタとサヤカが一応軽く会釈をしたが、モンガは振り返りもしなかった。
「何よあれ……」
二人が微妙な気持ちで首を傾げていると、三列目のシートに一人で膝を抱え相変わらずゲーム機を弄んでいた少年が、画面から目を離すこと無く、
「モンガはお金くれる人としか話さないよ」
ぼそりとつぶやいた。
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