1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
あかずきん?
おばあさんの家にやって来たあかずきん。
「おばあさん、体の調子はどう?」
おばあさんが寝ているベッドに近づくあかずきん。
ベッドにいるのが、おばあさんを食べたオオカミだと知らずに。
「おばあさん、起きている?」
「おぉ、あかずきんや、見舞いに来てくれたのかい?」
「?!おばあさん声低っ?!」
「か、風邪のせいだよ!」
「というか、体がずいぶん大きく、、、」
「風邪をひいてから、ずっとベッドにいたから太ったかねー」
「体毛もずいぶん毛深く、、、」
「寒いからね!」
「、、、おばあさん、もっと体を見せてもらえるかしら?」
「、、、いいわよ。
そのかわり、あかずきんお前を食わせろっ!!」
布団を勢いよくはね除け、あかずきんに襲いかかろうとしたオオカミ。
しかし、
「てめぇ、なんだその格好はっ?!?!」
あかずきんは、赤い頭巾にゴーグルとガスマスクを装備し、厚い布地の手袋をした手には注射器を持っていた。
「被験体3201、これはすごいな。新しい症例だ。こんなに体が変貌するなんて!!」
「ひっ、被験体だと?!」
「忘れたのか?お前は謎の病原体に犯され隔離されたことを」
「はぁ?!隔離だと?!オレはそんなババァを食っちまったのか?!」
「、、、食った?」
「ああ、そうだ。オレはババァを食ったオオカミだ。ついでにお前も食おうとしていた」
「お前、被験体3201を食ったのか?」
あかずきんの声は、決しておばあさんが死んで悲しんでいるような声ではなく、状況をただ確認しているような平静さだ。
そして、
あかずきんは懐から小さなマイクを取りだし
「こちら、あかずきん。被験体3201の死亡を確認。いや、病原体によるショック死でも失血死でもない。オオカミに食われたようだ。ああ、まだオオカミの胃の内容物の確認はしていないが。ん?このまま経過観察をしろって?」
やがて、あかずきんは通話を終えると
「オオカミよ、
お前は被験体3201を食った。だから、お前も未知の病原体に感染しているだろう。我々はお前のこれからの症状を観察することにした。」
「おいおいおい、オレはこれからどうなるんだよ?」
ベッドの上で頭を抱えるオオカミ。
「、、、、。」
「おい!!なんとか言ってくれよ!この病気は治るのかよ!薬とかないのか!!」
赤い頭巾を被った少女は何も言わない。
ゴーグル越しに見た少女の目は哀れみがこもっていた。
やがて、オオカミは血を吐き手足がビクビク震え始めた。
オオカミは霞む瞳であかずきんを見続けた。
オオカミの白目は黒く変色し始め血の涙を流していた。
オオカミが何か言おうとしたのか口を開くが、出たの血のかたまりと内臓のようなものだった。
そして、動かなくなったオオカミをそのままに家を出るあかずきん。
家に油を撒き、火をつける。
燃え盛る家を前に赤い頭巾の少女は何を思ったのか。
可愛らしい声がひとこと何かつぶやいたようだが、火で炙られた風にまぎれ誰にも聞こえない。
むしろ、聞くひともいないからつぶやいたのか。
おしまい
最初のコメントを投稿しよう!