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「社長は言い方がストレートで人によっては誤解します。わざとの時もありますし、効果的なこともある。けれどあの方はお嬢様ですよ? 怖がらせてどうするんです?」
「言っておくが、彼女は覚悟して俺のところに来ている。お前にも何も言わせないからな」
──そう、美桜は俺のだ。だって、俺が買って俺のものにしたんだから……っ。
美桜自身の気持ちなんて考えないで、手に入れたのだ。
そう思うと、柾樹には苦い気持ちが込み上げるけれど、それでももう美桜を手離すつもりは一切なかった。
「言いたいことはそれだけか?」
柾樹が頑なな顔になっているのを見て、倉田はそれ以上言うのは止めた。
ごめんなさいと美桜が俯いた時だ。
そんな顔をさせたい訳じゃないと、大きく柾樹の顔に書いてあったのだが。
普段表情を出さないだけに倉田は驚いたのだ。
美桜は気づかなかったようだが。
倉田は軽くため息をついた。
「大事にして差し上げた方がいいですよ」
──してる。
だからこんな会社など来なくていいと言ったのだ。
その可憐さにロビーの注目を集めていたことに本人はどれだけ気づいているのか。
美桜はあのタワーで幸せに大人しく住んでいればいいのだ。
「大事にするさ、妻になるんだからな」
食事は自分で作って一人で食べた。
今までは、両親とお手伝いさんもいた家庭でわいわいと団欒しながら食事をしていたけれど、とても広いダイニングに今は美桜一人だ。
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