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「まぁ、私も髪色染めたりしたからわからなくて当然か。
っていうか、そういえば秋田の家ってこの辺りだったっけ。就職して東京とかは行かなかったの?」
ずばりと聞いてくる。
今まさに、そういった現実から逃避して散歩している所だというのに。
しかしこの辺りは電車も一日に数えられるほどしかない田舎なので、三谷の言ったように上京するのがほとんどだろうから、そう聞かれるのは当然の事だ。
「つい最近までは居たけど……まぁ、ちょっとあって帰ってきた所だよ。
そういう三谷は?」
「んー……まぁ、似たようなもん。けどじゃあ、あたしの方が少し早く帰ってきてたのかもね」
あちらにも何か事情はあるのだろうが、深追いはしないでおくとする。
今更なことだが、立ったまま世間話というのもなんなので、少し間をあけて隣に座った。草を下に敷く感覚も懐かしい。
「小鳥遊の話とか聞いた? 離島で郵便局員やってるって」
「それは聞いたよ。あいつとは、たまにだけど今でも連絡とってるから。なんでも人口は島全体でも二百人足らずらしい。
若者はもっと少なくて、五十人いるかどうかだってさ」
「へーぇ……そこまでは初耳。けど、秋田はそういう事はしなかったんだね」
「そういう事って?」
訪ねると、三谷自身も考え出した。
意味そのものというより、言葉での伝え方に戸惑っているようだった。
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