めぐみ side

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

めぐみ side

「ああ、雪だ…」 見上げると、灰色の空から白い雪が降っていて、まるで雲が丸まってそのまま空から落っこちてるみたいで、ふわふわで、なんだか可愛くて。 でも手のひらで受け止めたらそのままじゅわって消えていく姿は少し儚くて、寂しくて。 サンタさんってこんな寒い日に外を走り回ってるのかなあって思うと、少し可哀想に思う。 独り身の私にクリスマスプレゼントなんてもちろん無いわけで、すれ違うカップルを見る度に羨ましいなあって気持ちと、あの人に会えたらいいのにって気持ちが交差する。 あの人の顔、仕草、声。ただ考えるだけで甘くて、でも胸が高鳴って苦しくて、その度に好きだなあって1人で苦笑い。 いつからか大きくなった気持ちを伝える勇気もなくって、ただ、今年もジンクスにすがるんだ。 丘の上のクリスマスツリーの下でクリスマスの日に好きな人に会えると気持ちが繋がる。 そんなジンクスの為に今年も丘の上に来てしまった。 期待せずに顔を上げた先に、ドクンっと心臓が高鳴る。 「ゆう…た?」 こちらに気づいたあの人は、少し驚いた表情で口を開きかけた。 そのとき、あの人の後ろからひょっこりと知らない女性が顔を出し、不思議そうな顔でこちらを見た。 「あ…、あ…」 後ずさり、踵を返して走り出した私の姿は、彼らにどう映っただろう。でも、私にはこれが精一杯だったんだ。なにか詰まったように胸が苦しくて、苦しくて、一息一息が辛くって。 ただ頬を伝う涙が、私に現状を理解させた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!