ゆうた side

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ゆうた side

「クリスマス…ねぇ…」 嫌に多いカップル達を横目に欠伸をしながら通りを歩いていると、口の中に冷たいものが入ってきた。 空を見上げると雪が降っている。 「さっむ…」 思わず首に巻いたマフラーに顔の半分をうずめる。 半分めんどくさいと思いながらも、俺の足は丘の上に向かっていた。 『知ってる?丘の上のクリスマスツリーの下でクリスマスに好きな人に会えると気持ちが繋がるんだって』と昨日の電話ではしゃいでいたあいつの声を思い出す。 別にクリスマスツリーとかジンクスとかどうでもいい。そういう類のもんは信じちゃいない。 ただ、あいつは行くのかもしれないと考えると何となくモヤモヤするというか、そういう相手がいるのかもしれないって考えると、こう落ち着かないというか。 何やってるんだ俺。そう思いながらクリスマスツリーの下に来てしまった。辺りを見渡すがあいつの姿はない。 と、突然肩を叩かれ驚いて振り向くと見慣れた姿があった。姉だ。ニヤニヤしながらせっついてくる姉を無視して立っていると、ふいに聞こえた自分の名前に心臓が高鳴った。 声の方に顔を向けると、あいつがいた。 話しかけようと口を開きかけた瞬間、あいつの表情が変わり、急に後ずさりをし、踵を返して走っていってしまった。 困惑する俺に、姉がすまなそうに手を合わせてくる。それでも呆然としていると、バシンッと背中を叩かれた。姉の顔には行ってこい、と書いてある。俺は走り出した。 焦る気持ちと騒ぐ心臓が、今まで無視してきた自分の気持ちを嫌という程教えてくれる。 ドキンっ。心臓が鳴った。 小さく震えるあいつの背中。 荒い呼吸を落ち着けながら、俺はゆっくりと近づいた。
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