災厄が過ぎた後

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 しばらく市内を走り続けた後、河川敷付近にあるマスコミの車両が集う駐車スペースにオートバイを停めた私は、ここから歩いて街の状況を調べ始めた。  多摩川の支流に架かる橋は完全に破壊され、川に落下して瓦礫の下敷きになった自動車の周りを東京都消防のレスキュー隊が取り囲んで救助活動を行なっていた。その川沿いにはレスキュー隊車両や救急車といった消防車両が並び、続いて国防陸軍の軍用車両が道路端に並んでいた。  巨大怪獣が通った経路から遠いにも関わらず何故か全半壊した一軒家が並ぶ瓦礫の街の一角を歩けば、破壊された自宅の惨状にただ茫然としている家族の姿や声を押し殺して泣いている人々の姿が見受けられた。私はそれらの光景を写真に収めていたが、台風の被害を打ち消す程の巨大怪獣がもたらした惨状を目の当たりにして、血の気がゆっくりと引くように衝撃を受けていた。  隣の市の境に近い場所まで歩き続け、ふと交差点の角の歩道に目をやると、毛布が掛けられた横たわる大きな何かのそばで着ている衣服がボロボロの若い女性がうずくまりながら泣いていた。  すぐに察した。この状況を撮ろうとレンズをそちらに向けるが、それに気付いた女性が私を睨み付けた。無言の女性から発せられる何かを察し、私はその場をゆっくりと去った。  似たような光景を、私はその後も何度か見かけた。
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