0人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、その光景をじっと見ていると、何故か私はホッとしていた。2人が全く悲しそうに見えなかったのだ。
男性も女性も、何も言わずそして動かずにただじっとお互いを抱き締め合っていた。時折腕の力が抜けて身体から離れそうになるも、お互いがお互いを絶対に離すまいと何度もきつく腕に力を入れて抱き締め合っていたのだ。
避難の最中に離れ離れになっていたのか、どちらかが巨大怪獣の襲撃に遭って一時消息不明になっていたのか、それともどちらかが国防軍の兵士で巨大怪獣と戦っていたのか、またはどちらかが警察官で地域住民を避難させる為に命懸けの任務に身を投じていたのか――色々な想像ができたが、その詳しい事情を2人から聞いてないのでわからずじまいだった。が、それを聞くのは野暮だろうと、私は直感で思った。
巨大怪獣の脅威に飲み込まれて悲しみと怒りに包まれた瓦礫の街の中で、この場所だけは幸せそうでとても美しいと感じた奇跡の光景だった。そして、私はその光景を写真に収め、これ以上邪魔してはいけないとこの場を去った。
最初のコメントを投稿しよう!