7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふざけんなぁ!!!」
自分でも驚く程、大きな声。怒号。
こいつもぎょっとしたのだろう。
去ろうと一歩出した片足を、上げた状態のまま、ぽかんと固まっている。
私は考えるより、先に行動に移していた。
身長差がもどかしいので、思い切り、足のふくらはぎを蹴り飛ばす。
「い゛だ!?」
文句は言わせない。
直ぐ様胸ぐらを掴み、引き寄せる。
「そんなの、とっくにわかってた。」
そのまま口を塞いでしまうと、彼も抵抗を止めた。
自分からするのは、そういえばはじめてだなと思いながら、早めに口を離す。
「お前は、本当に、勝手な馬鹿野郎だ。この弱虫!アホンダラ!!私が好きでもない奴と一つ屋根の下で生活する尻軽だと思ってやがったのか!?ふざけないでよ!!!お前が好きだから、私から近づいたんだぞ!私の方がお前を愛していたんだ!!」
私こそ何を言っているんだろう。
口から飛び出す言葉も、目から流れ出る液体の意味も。
全て理解不能だ。
何もかも溢れ出て、止まらない。
言わないようにしていたのに。
自覚しないようにしていたのに。
本当に嫌な奴。
最後の最後も、裏切るような事して。
彼は私を引き剥がす事なく、そのまま強く抱き締めた。
「お前に罵られんのも、久しぶりだな。可愛く着飾っても、お前は変わらねぇな。口が汚くて、泣き虫だ。」
私の顔に、オレンジ色の光が降り注ぐ。
ああ、やっと夜が明けたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!