寸前クラッカー

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ずっとずっと、言えなかったことばがある。 ありふれていて絶え間なくて間違えなく祝福をこめた、たった五文字。 太陽がそろそろ鬱陶しい。 あつくて眩しくて、そのせいで泣きそうになってるだけだ。 「何のことかわかんねーけど、」 光の笑顔がいちばん輝いて見えるけれど、いまは眩しすぎて、うまく笑えない、なぁ。 「ありがとう」 ずっと、聞きたくなかったことば。 光からの “ ありがとう ” が何よりきらいだった。聞きたくなかった。 だって、それは、本当のさよならに似ているから。 バイトに遅れそうなんて嘘だよ。時間はまだたくさんあるし、むしろありすぎて困るし。 デートの相手が彼のたいせつな子だから、だから譲ってあげてるの。 …さよならでも、言う気になったの。 行かないでなんて言えない。私の立ち位置は “ 元 ” がついてる。称号でもなんでもない漢字一文字が大きく表示されてる。
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