4人が本棚に入れています
本棚に追加
ずっとずっと、言えなかったことばがある。
ありふれていて絶え間なくて間違えなく祝福をこめた、たった五文字。
太陽がそろそろ鬱陶しい。
あつくて眩しくて、そのせいで泣きそうになってるだけだ。
「何のことかわかんねーけど、」
光の笑顔がいちばん輝いて見えるけれど、いまは眩しすぎて、うまく笑えない、なぁ。
「ありがとう」
ずっと、聞きたくなかったことば。
光からの “ ありがとう ” が何よりきらいだった。聞きたくなかった。
だって、それは、本当のさよならに似ているから。
バイトに遅れそうなんて嘘だよ。時間はまだたくさんあるし、むしろありすぎて困るし。
デートの相手が彼のたいせつな子だから、だから譲ってあげてるの。
…さよならでも、言う気になったの。
行かないでなんて言えない。私の立ち位置は “ 元 ” がついてる。称号でもなんでもない漢字一文字が大きく表示されてる。
最初のコメントを投稿しよう!