寸前クラッカー

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□ □ □ 何も変わらない日常が広がっている。 あのふたりがお似合いって言われることも変わらず、中庭の木陰で笑い合う彼らも変わらず。 それが視界にうつって溜め息をついてしまうことも変わらない。 ただ、こころがすっきりしている。 「ち〜よ〜ちゃんっ。このあいだはごめんねえ、遅れちゃったけどお誕生日おめでとうっ」 「あ、ありがと」 「水臭いわよ、千頼。もっと誕生日アピしてもいいんだからね」 「うん、覚える気はないってことね。でもありがと」 駆け寄ってきた友人を抱きしめて、笑顔を返す。そうしていると、何を見ていたの、とまた問われた。 「あれ見てたの」 「光くんだぁ。なになに? もしかしてちよちゃん、光くんのことすきなの?」 「それ私も気になってた。ときどき見てるよね、あいつのこと」 なぜかきらっきらとした視線が集まるけど。
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