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結局日曜の予定はなくなり、本当は入れる予定がなかったバイトのシフトだけがカレンダーを埋めた。
今日は、そういえば、私がひとつ歳を取る日。
そんなこと、妹に言われるまで忘れていたけれど。
「千頼。今日は何時に帰るの?」
履きなれたスニーカーの紐を結んでいた時、母の声が後ろから掛けられて肩越しに振り向く。
「んー、わかんない。終わったら連絡するね」
「早めに帰ってきなさいね。ケーキ、つくって待ってるから」
「やったあ。チョコレートでお願い」
「わかってるわ。行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
私の家は誕生日に手作りのケーキっていつから決まってたんだろう? なんて余計なことを考えながら家を出た。
清々しい空。不快でしかたない太陽。根っからのインドア派の私にはちょっとつらいものだ。
やっぱり家を出るには早すぎたかもしれない、とスマホに表示された時刻を見て後悔する。
引き戻そうかと迷っていた瞬間、
「あれ、千頼?」
そんな思考が一瞬で消え失せるような声が、私を呼んだ。
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