寸前クラッカー

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□ □ □ 結局日曜の予定はなくなり、本当は入れる予定がなかったバイトのシフトだけがカレンダーを埋めた。 今日は、そういえば、私がひとつ歳を取る日。 そんなこと、妹に言われるまで忘れていたけれど。 「千頼。今日は何時に帰るの?」 履きなれたスニーカーの紐を結んでいた時、母の声が後ろから掛けられて肩越しに振り向く。 「んー、わかんない。終わったら連絡するね」 「早めに帰ってきなさいね。ケーキ、つくって待ってるから」 「やったあ。チョコレートでお願い」 「わかってるわ。行ってらっしゃい」 「いってきまーす」 私の家は誕生日に手作りのケーキっていつから決まってたんだろう? なんて余計なことを考えながら家を出た。 清々しい空。不快でしかたない太陽。根っからのインドア派の私にはちょっとつらいものだ。 やっぱり家を出るには早すぎたかもしれない、とスマホに表示された時刻を見て後悔する。 引き戻そうかと迷っていた瞬間、 「あれ、千頼?」 そんな思考が一瞬で消え失せるような声が、私を呼んだ。
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