寸前クラッカー

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「あ、(ひかり)…」 「久しぶりー、って、そうでもねえな」 ニッと口角を上げた彼…、光は、軽く片手を上げて親しげに近づいてきた。 いまの心境をひとことで言えば、間違えなく “ オーマイガー ” だ。 彼の茶髪がきらきらとしていて、たぶんそれだけの理由じゃないのに眩しくて思わず目を細める。 「千頼が外に出るなんて珍しいからさ、あ、もしかしてこれからバイト?」 「ご名答。金を稼ぎに行くの」 「ごもっともだけど言い方が悪いな」 ふはっ、と吹き出す彼の笑顔は思い出のなかのそれとは違って、たのしそうにほころんでいた。 ああだめだ、こんなにノスタルジックになってしまっては失礼なのに。 私はいつもそう。光に、躊躇ってばかりだ。 当の本人は気づかないからそれが救いなのだけど。 「光は?」 「ん?」 「これからバイト?」 「んー、いや、不正解」 デート、かな。 ゆっくり広げられる笑みがそう言って、光は柔らかく目を細める。 (………その顔が、たまらなく。) 後悔のなかにねじ曲げた芽が勝手にこころを震わせた。もう遅いよ、って告げた理性を簡単に飛び越えてしまう切なさ。あの日のことを鮮明に思い出してしまう。
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