19人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
私は驚いて顔をあげる。
「それは…私の父からお聞きになったのですか?」
尋ねる私に、神田様は少し困ったように首を傾げ「そうですねえ…、寿々さんのお父上からもお聞きしましたが…」と言う。
「父の申し上げることは、話半分でお聞きくださいませ。
大体が、話が大袈裟なのです、いつも」
私が憤慨して言うと、神田様は可笑しそうに笑いだした。
「面白い娘さんだ。
そうですね、お父上の仰ることはいつも話が壮大ですね。
だけど、お父上の凄いところは、単なる大言壮語ではないところですよ。
時間がかかっても必ず実行なさって居られる」
「それに、寿々さんの生糸は、私も実際に目にしたことがあります。
素晴らしい出来だと、親の欲目ではない私の目でも感じましたよ」
え…
私は、なんだか顔が熱くなってくるのが判ってまた下を向いた。
嬉しい…
何の役にも立っていないと思っていた私の仕事が、評価された。
「あ、すみません、ちょっと知り合いが呼んでおりますので、のちほどまた」
と神田様の声がして、慌ただしく立ち去る気配がした。
あーあー。
また一人になっちゃった。
もう、嫌になるわ。
最初のコメントを投稿しよう!