第1章 (1)落成式

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 私は驚いて顔をあげる。  「それは…私の父からお聞きになったのですか?」  尋ねる私に、神田様は少し困ったように首を傾げ「そうですねえ…、寿々さんのお父上からもお聞きしましたが…」と言う。  「父の申し上げることは、話半分でお聞きくださいませ。  大体が、話が大袈裟なのです、いつも」  私が憤慨して言うと、神田様は可笑しそうに笑いだした。  「面白い娘さんだ。  そうですね、お父上の仰ることはいつも話が壮大ですね。  だけど、お父上の凄いところは、単なる大言壮語ではないところですよ。  時間がかかっても必ず実行なさって居られる」  「それに、寿々さんの生糸は、私も実際に目にしたことがあります。  素晴らしい出来だと、親の欲目ではない私の目でも感じましたよ」  え…  私は、なんだか顔が熱くなってくるのが判ってまた下を向いた。  嬉しい…  何の役にも立っていないと思っていた私の仕事が、評価された。  「あ、すみません、ちょっと知り合いが呼んでおりますので、のちほどまた」  と神田様の声がして、慌ただしく立ち去る気配がした。  あーあー。  また一人になっちゃった。  もう、嫌になるわ。
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