第2章 (1)製糸所 

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 私は頭を振って雑念を追い払い、自分の両手を握りしめて言葉を選びながら口を開く。  「私のような者には過ぎたお話で…どうお返事してよいか判りません。  申し訳ありませんが、少しお時間をいただけますでしょうか」  加藤様はほっと息を吐く。  「そうですね…お父上からまったく聞いていらっしゃらなかったようだから。驚かれたでしょうね。  判りました。良いお返事を期待しながらお待ちしますよ」  うう…言外の圧力がすごい…  私は深く頭を下げた。  そりゃそうだよね、もともとこっちから言いだした話なのに、待てっておかしいよね。  父が決めた縁談なのだから、私に選択の余地がないのも判ってるけど…  「さて、では中を見学しましょうか。  お父上にお願いして、少し二人で話す時間をいただいたのですが、そろそろしびれを切らしておられるのではないかな」  加藤様は優しく笑って、私の手を取って正面の方へ案内してくれる。  優しい方だな…怒っても当然なのに。  私はおとなしく手を引かれて、並んで歩いて行った。  
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