別れの理由

カウント１０

　私は３２歳でファッションデザイナーをしている。結婚歴は一回。カーレーサーの三沢正好と結婚し、６歳の和範という名前の息子がいる。

　夫の正好の育った徳沢家は名門であり、一族は会社経営をしていた。カーレーサーとなった正好とその父である徳沢孝次の間には溝ができてしまった。そしてついに夫は勘当されている。その為、夫は結婚後には私の三沢姓を名乗った。

　幸せな生活が続き、お腹には小さな命が宿った。しかし生まれてきた和範は父親の顔を知らない。幸せの絶頂期に正好はレースの事故で亡くなってしまったのだ。それから私は和範を産み、仕事をしながら、一人で育ててきた。寂しいと思ったこともある。でも生活を成り立たせるために必死で全てをこなし、感傷にひたっている暇さえなかった。