カウント10

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 肖像画の主は栗色の髪で、筋肉質の引き締まった体をしていて、陰鬱な表情は彼が時折激しい怒りを爆発させる人物であることを想像させる。彼の内には底知れぬ深い闇があるのをひしひしと感じる。  抗しがたい力に引き寄せられて今日もまた観にきてしまったが、また幻覚に襲われるような気がして胸騒ぎがする。  肖像画が眩しい光のかけらに変わった時、薄いベール越しに見るように、おぼろげだったが、別の時代の別の場所としか思えない光景が目の前に現れた。  壮麗な館が垣間見え、ベルベットの官能的な感触をこの肌に感じたのだ。
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