カウント10

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 私は全てを振り払うように大きく深呼吸した。私はバックを持って出口に向かう。しばらく歩いてバス停にたどり着く。バスに乗っても、私はまだぼんやりとしていた。ラッシュに巻き込まれたバスはのろのろと走り、華やかなブティックが集まる高級ショッピング街を過ぎて行く。移り変わる窓の景色も今日ばかりは私の心を捉えることはなかった。  いつものバス停で降りてそこからすぐ近くの小学校へ向かう。小学校の学童の教室に入ると、息子の和範が私に向かって走って来た。小学生になってすっかり男の子らしくなったが、紅色の頬は赤ちゃんの時のままだ。美術展のことを頭から追い出し、私は和範と手を繋いで自宅に戻った。 「今日はみいくんと遊んだんだよ」 「よかったね。さあ、帰ろうか」
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