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カヤック
私と朋也が出会ったのは、学生時代のことだった。何となく友達になって、何となく好意を持ち始めて、そのまま流れに乗ったかのように付き合い始めた。その関係は社会人になっても続き、今に至る。
……この2年ほどは遠距離恋愛で、決して上手くいってなかったことを除けば。
2年前、朋也が突然「仕事を辞めて地元に帰る」と言い始めた。
地域おこし協力隊として体験型のアウトドア観光に携わり、ゆくゆくは事業化する地域活性化策のための募集に採用されたらしい。
確かに、凝り性である彼の釣りの趣味はカヤックへと連なり、いつしかカヤックインストラクターの検定を受けるまでになっていた。
とはいえ、まさか仕事を辞めるなどとは思ってもみなかった私は、流石に反対した。何より、相談もなく決めてしまったことが気に入らなかった。
残念ながら私は朋也を応援することができなかった。
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