ショウマストゴーオン 37

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ショウマストゴーオン 37

ショウマストゴーオン 37 月が水面に映り、ちらちらと儚く揺れている。銀は感慨深い顔付きでその様を眺めていて、こころの中がさっき教えてくれた頃を思い出しているのがオレには判った。 それがやっぱり嫌で、 銀にこちらを見て欲しくて、 今のオレが一番銀を好きだと知って欲しくて、 「銀、好き」 と呟いた。 轟音にかき消されてしまったのか、銀はこちらを不可思議な顔で見た。 何?って風に首を傾げたのでオレは思いきって銀の唇に小さいキスを落としじいっと瞳を見詰めた。 銀のくれる、熱い瞳ってやつになってると良いんだけど。 今だけ。 たぶん次はない。 言葉では誘うのが恥ずかしいのでオレは銀が前のように、見境ない子供のふりをしてじゃれてくれるのを望んだ。 銀はその想いに気付いてくれ、 「ケイ具合悪いって言ったよね?そんな瞳で見られたらくらっとしちゃうけど」 と苦笑しつつも脇に座るオレを引き寄せ甘いキスをした。 「いいよ、魔界にちゃんと来れたら色々してもいいって言ったもんね……。銀こそ怪我してるから、嫌かもしれないけど」 「本当?でもあんまり無理な形じゃできないな……」 銀はオレをからかうようにもったいぶって言ったけど、口ではそう言いながらもおずおずとオレの着物の帯を緩め始めた。 「疲れる事なの?」 「判んないまま言ったの?もう……」 オレは銀が急に大人に見えてきた。 銀は含み笑いをしながら、オレの着物の襟元を開け、首筋に舌を這わせ始めた。 腕は着物の裾に差し入れて、足をまさぐっている。胸元に飽きると時々顔を寄せてきては音をたてて深いキスをした。 着物をたくしあげられて太股まで露になる。 自分がそんなあられもない姿にさせられるなんて消え入りたいくらい羞恥心が湧いてきたけれど、銀はうっとりと舐めるような視線で、月灯りの下青白く照らし出された足を眺めた。 銀がオレの姿に満足そうだったので、オレは少しほっとした。銀の気に入らないようでは困るもの。 銀、何でも望むことしてあげたい。 喜ばせてあげたい。 好きなように扱って。 そしてできるなら、 今夜の事、君の記憶の片隅にでもいいから覚えていて。 銀の濡れた舌の感触にも、武骨で節のしっかりした指の動きにも、オレの体は正直に反応した。 着物の前を解かれ敷布代わりにして、銀は座り込み、オレを上に座らせた。足を開くのにまた躊躇したけど、 「ケイ、恥ずかしい?可愛い」 と銀が楽し気に言うのがオレをやけにさせた。 銀のしなやかに程良く筋肉のついた背中に腕を回した。 服が肌に擦れるのももどかしくなってきて、段々体の中も熱くなってきた。 「銀も、ね、服脱いで」 出会った頃にはまだ少しあどけなさもあって、行動も子供っぽく感情剥き出しで、オレが折れたり、弟みたいに面倒みてあげてたのに。 いつの間にこんなに育って素敵になって。いやでもすぐに格好良くはなってたっけ……。 すぐに好意は感じたっけ。 銀が胸の突起や腰のくびれを撫でると、オレの体はびくりと跳ねあがった。そのたびに頭が痺れて腰が浮わつく。 「気持ち良い?どう?」 銀は言葉で言わそうとしているみたいだったけど、オレは、 「ん、うん」 としがみつきながら答える事しかできなかった。口を開けば声をあげそうだったからだ。 おかしな声を聞かせたら変に思うかもしれない。 「ケイ可愛い、あいしてる」 銀は興奮気味に何度もそう言い、指を奥まで忍ばせてきた。オレは反射的にあのお風呂場の時と同じように驚いた。 「やだ、手汚れるよ」 「何それ」 銀は意地悪そうに笑った、形ばかりの注意だというのが判っているらしい。 あの時は何するのこのガキと思って嫌だった。 自分のものだ、という風に勝手にあちこち触られるのが嫌だった。 でも今は気持ち良くて、もっと奥まで行って欲しくて、ずっとこうしてて欲しくて、オレは何度も震えた。 銀もとても良さそうで、ケモノの匂いがしていてオレを愛おしいものみたいに触れてくれたので、オレは、涙が自然に溢れてくるのを感じた。 でもそれは、嬉しいからかもしれなかったし、 この今さえも全て忘れてしまう悲しさからかもしれなかった。 喜びと同時に、たまらない悔しさがこみ上げた。 オレが少し体を揺らすと、銀は何かきつそうに顔を歪めて浅く呼吸を始めた。銀、良くないかな。満足できなかったらオレのせいだ。 次第に痛みが不思議な気持ち良さに変わっていく、きっと快感ってやつだろう。銀に流れをあわせるとそれは増していくと判って、オレは自分から求めた。はしたないと思われるかも、という心配まではもう頭が回らなかった。 もっとして。もっともっともっとして………。 さっきから眩暈がしている、中が熱くてからだが溶けてしまいそうだった。そして銀に全部混じれたら良いと思った。 このまま壊してくれても良いと思った。 銀は積極的なオレに悦び、様々な愛の言葉をくれながらオレを愛した。 「銀、あいしてる、あいしてる、あいしてる」 理性が飛び、オレはかすれた声で銀の頭を抱きながら何度も何度も繰り返した。 明日は無いかもしれないから、 オレの言葉を、 体を、 こころを覚えていて。 オレは銀の恋人だと言って。
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