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ショウマストゴーオン 4
ショウマストゴーオン 4
「るうさん、あのね銀に別の部屋をあげて欲しいの、銀が身体を触るから……」
お風呂に一緒に入った日、銀がした色々な事を銀はベッドでもするようになった。あの時程嫌な感じはしなかったけど、
「ケイ、だいすきだよ」
と繰り返しながら迫ってくる銀を毎晩説得するのにオレは疲れた。触られる事に慣れてしまってはいけない気がするのだ、だからオレは怒っているふりをした。
「マセガキ、ちょっと来い!」
るうさんは叫んだが、なんだか楽しそうだった。
「ほら、ケイが怒っているぞ、お前が無理じいするから。嫌がる時はしないと言いなさい」
「やならしなーいよ。ごめんねケイ」
嘘だ。奴はるうさんの手前言っているだけだ。しかしオレがそっぽを向くと、許して貰え無そうなのが判ったのかそこで初めて銀はうろたえた顔をした。
そして跪きオレの脚に取りすがると、教えた限りの謝罪の言葉をオレにくれた。
「許してください、ごめんね、もうしません、僕が悪いから」
オレはぞくぞくするような優越感を味わいながら、
「銀はオレのしもべなのになんでご主人様にあんな事するの?間違ってなーい?」
と冷たく言う。
「うん、僕はケイの家来だよ……」
銀は淋しそうに返した。本当は恋人だと言って欲しかったのかも知れない。
すごすごと銀が新しく与えられた部屋へ下がると、
「で?いきなり本壊でも遂げられたのか?」
にやにやとるうさんは訊いてきた。
本壊て何?でも銀にされた事は恥ずかしくて言えない、オレは適当に笑って誤魔化した。
「まあ気が済んだら早めに許してやれ。いきなり凶悪な龍に戻って街壊滅させられても困るしな」
るうさんの捨て台詞にオレはぎくりとした。そうだ銀は強いんだっけ、機嫌を損ねちゃいけないんだった……。
++++++++++
一人のベッドは広いなあと思いながら床につき、夜型のるうさんが眠る前に目覚める。
るうさんは日々徹夜で怪しげな札を得意先の依頼で造ったりしていて、朝起きたオレ達と朝飯を食べて寝るすごい不健康な暮らしだ。
オレが部屋を出ると、床に何か置いてあった。
見ると朝露に濡れた綺麗な花で、すぐに銀の仕業だと判った。どうして恥ずかしげもなくこんな事するかなあのガキは!オレは全身が熱くなった。
部屋の花瓶にそっと花を生けてから、何食わぬ顔をして居間へ行くと、既に別世界のるうさんの影に銀はいて、オレが知らんふりでキッチンへ向かう姿をちらちらと窺い見た。
見られてるって快感だなあ。銀は何度かオレに話しかけたそうに口を開け、次に見て欲しいのか用もないのに室内を歩き回ったりした。
でも決してオレに触れる事はしなかった。
るうさんをびしばし叩き起こして朝飯を食べさせ、るうさんが爆睡してしまうと銀は所在なげにオレの家事を少し離れた所から見ていた。二人になるのが気まずいのに、どこかへ行く気もないようだった。
良い天気の中洗濯物を干し終って休んでいると、銀が間隔を置いて隣に座ってきた。
じっと痛い程オレの横顔を眺めるので、オレはぱっと銀を見返した。
何、じろじろ見てないで言いたい事あったら言えよ!そう言おうとしてオレは口をつぐんだ。
銀は言えないんだった……。
銀はオレが見返したので頬を染め笑顔になった、そんな事で喜ぶなんて馬鹿じゃないのとオレは無性に照れた。
「花、ありがとね」
素っ気なく言うと銀は大きく頷き、真っ直ぐにオレを見詰めた。オレは何故か途端に体が火照りだした。触られるより余程やばいかも。
「別にもう怒ってないよ、昨日言った事は気にしないで」
オレがゆっくり言うと昨日の事を思い出したのか銀は申し訳ないような顔をした。
「僕、忘れてた、僕達が、恋人、同士ではないこと。ごめんね」
でももう只の主人と式神でもないと思うんだけど。
オレは、一部屋に一人じゃ無駄だってるうさんが怒るかも、とか、お前はオレを護るんだから、傍に居なきゃ駄目なんだ、とかあれこれ理由をつけてまた部屋に戻っておいでと言った。
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