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「なんでもない。試験が終わって俺も気が抜けちまって、変なこと言ったよな」 「無理しなくていいよ。誰だって試験終わった後は抜け殻だって。今日はやっぱりやめておこうよ」 「いや。家で一人でいた方が、余計なことを考えちまう。こうやって貴雄と居る方が楽しいし、癒されるんだ」  そう言われて俺は頬を染めた。 「じゃ、じゃあ、せめて正臣の行きたい場所に行こう。気晴らしになるようにさ」 「俺?俺の行きたいところは貴雄の行きたい場所だ。今日は結構小遣い持ってきたし、どこでもいいぜ」 「そんな、でも」 「頼むよ。俺、貴雄の合格祝いまだ何も用意できていないんだ。せめてお前の好きな場所に連れていってやりたい」  俺は少しの逡巡の後に口を開いた。 「じゃあ」   「俺、ラブホテルって初めて入った。高校生でも止められたりしないんだな」  正臣がホテルの部屋を物珍しそうにキョロキョロと見渡しながら言う。 「初めてだったんだ」  俺が呟くと、正臣がこちらを見てにやりと笑った。 「当たり前だろ。俺のことどんなヤリチンだと思ってんだよ」 「そっ、そんなこと思ってないよ。だけど正臣、じゃあラブホでも行くかって普通に言うし、ここに入る時も堂々としていたから経験あるのかと思って」 「ないよ。ただ貴雄が誰もいない場所でいちゃつきたいっていうから、ホテルくらいしか思いつかなかったんだ。堂々としていたのは、こそこそして高校生だってばれて、入口で止められたら嫌だからさ」 「俺、いちゃつきたいなんて言ってない。ただ二人きりになれる場所に行きたいって言ったの」  正臣が俺の言葉を聞いて、声を立てて笑うと、ダブルサイズのベットにぼすんと横になった。正臣が寝ころんだまま俺に手招きする。  俺は街灯にすい寄せられる蛾のように近づいていった。  正臣の隣に座ると頬をするりと撫でられる。 「本当に、期待してなかった?久しぶりに会うのに」  そう言われると俺は真っ赤になって何も返せなかった。  期待していたに決まってる。  正臣と最後にキスをしたのは三か月以上前の話だ。  貪るように乱暴に俺の唇を奪いながら、正臣は優しい手つきで俺の腰を撫でた。 「正臣。シャワー浴びたい」 「じゃあ、一緒にはいろっか」  俺はこくりと小さく頷いた。
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