革命前夜

12/58
前へ
/58ページ
次へ
 アリアンヌの総督の統治下にある兵隊の半数以上が傭兵だ。ワンダーラには三種類の土着の宗教があり、ピリナ教を信仰する兵隊をピリナ兵と呼んでいる。  ヒリナ教徒は、親子代々、戦士のという仕事を生業にしており、ピリナ神は戦の女神としてあがめられている。  ワンダーラにおけるピリナ教徒は人口の五パーセント程だといわれている。  十七年前、二千人ものピリナ兵が宗教や待遇に関する不満を爆発させた。北部の駐屯地にいた全員が興奮状態だった。あの時は、アリアンヌ人の将校たちが真っ先に虐殺されている。  彼等は、街に繰り出すと、子供も含む白人を皆殺しにしてしまった。これが、いわゆる世にも有名な『ビリナの乱』である。その時は、凄まじい戦闘の結果、何とか、アリアンヌの援軍によって反乱は終息した。  ワンダーラ全国のピリナ兵の全員が反旗を翻した訳でもないので、ピリナ兵同士での闘いとなり、その後、同族間で様々な遺恨を残したようである。  蜂起したのは、北部出身のピリナ教徒だった。アリアンヌの監視が手薄な北部はテロの温床となり易い。北部の原理主義者を崇拝しているピリナ兵を扇動した首謀者であるワンダーラ人の指揮官は広場で処刑されている。 『薬包には豚脂が塗られている。噛めば穢される』  そんなふうにして、ピリナ兵を煽った過激思想の宗教指導者も流刑地に送られた。  けれども、それ以後も、殖民地支配に抵抗する反乱は各地で起きている。いつも、パターンは同じ。まず、彼等は囚人を解放する。  そのことによって略奪や政府機関の爆破騒ぎが起きる。そして、どいう人がどんな目的で反乱起こそうとも、エルザのような女性達が暴徒に狙われる。だから、こうして暗い地下室に隠れている。  ちなみに、この町では、緊急事態時に白人が逃げ込む場所は決まっている。アリアンヌの軍病院だ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加