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エルザは地面に両脚を踏ん張ったまま悔しげに言い返した。
『あれは、村の子が野良猫を川に捨てたからよ。許せなかったのよ』
『でも、おまえと喧嘩したせいで、あいつら教頭に鞭で尻を叩かれたんだぞ』
何しろ、学校の運営費はエルザの父が半分以上出している。大切なスポンサーを怒らせてはならないと教頭は焦ったようだ。
『動物虐待は法律で禁止されているのよ。叱られて当然よ』
アリアンヌでは動物保護団体が幅を効かせている。
動物保護団体の理事は、馬好きで有名なグレイ公爵夫人である。
『まぁな。だけど、野良猫は、畑を荒らすからマジでやっかいなんだよ。種まきした後に土を掘られると困るんだ。それに、おまえの猫は不幸を呼び込む黒猫だぜ』
『何なのよ。差別しないでよ。ミミちゃんは利口よ。うちの屋敷を鼠から守ってくれるわ』
エルザは、先月、川から助けた野良猫をミと名付けて飼っていた。雄猫のミミは甘え上手だった。いつも、エルザの傍らにいる。
『だけど、ミミは、おまえのベッドにションベンをかける馬鹿猫だよな。うちの親父が嘆いていたぜ。でもさ、本当は、おまえがお漏らしを誤魔化す為に猫を飼ったんじゃないのか?』
『そ、そんな事ないわよ』
ドキッとして真っ赤になってそっぽを向くが、ジェイミーがニタッと笑っている。やばい。心臓がバクバクしてきた。実は、オネショをした朝はミミに罪を被せている。
もしかして、賢いジェイミーには、お見通しなのだろうか。身震いしながら、アタフタしたように言い放つ。
『とにかく、あたしに偉そうな態度をとらないでよね! ジェイミーのバーカ!』
エルザは、あっかんべーと舌を出して駆け出そうとする。その時、そうはさせまいとして手を引かれた。
『そっちに行くなよ。雑木林の中に狐避けの罠が仕掛けられているんだぞ! 脚が、ちょん切られるぞ! いいのかよ!』
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