革命前夜

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『でも、お散歩したいのよ』 『やめろ。あの林の中には幽霊がいるんだぞ。あそこの林で首を吊ったメイドがいるんだぞ』 『う、嘘よ……』 『本当さ。それ以後、そこに入った奴は呪われる。聞こえないのかよ。血まみれの女の悲鳴が聞えてきたぞ。ほうら、おまえはお化けに呪われるんだぞ』  彼が迫真の演技に怖くなってしまい、身震いした。やだやだ。そんなの聞きたくない。心の底から怯えた結果、ジュワワとオシッコを漏らしていた。  ジュワワーー。生暖かい小便が足首を濡らしたた瞬間、エルザはうえーんっと泣き出していた。恥しくてたまらなかった。それに、エルザの家庭教師のミス・ライリーは躾けには厳しい。  ああ、どうしよう。エルザはパニックになり座り込み、えんえんと泣き続けた。 『ライリー先生に叱られちゃう。うえーーーん!』 『ビービー泣くな。バーカ。おまえなんて、こうしてやる。これでも喰らえーー』  ジェイミーが湿気を帯びた馬の糞を手づかみにすると、エプロンドレスの胸や裾に押し付けた。モワッと馬糞が香るものだから、エルザは顔を慄かせて悲鳴をあげた。 『きゃーーーーーーーーーーーーー。やめて、何するのーーー』 『うるせぇ、早く帰って着替えろよ! ベルなら何とかしてくれるさ』  エルザの背中を押しながら、とっとと帰れというように手を振りながら笑っている。  ジェイミーは悪魔の化身だわ。きっと、そう違いない。  エルザが泣きながら裏口に戻ると、若いメイドのベルが眉根を下げて腰を屈めた。エルザ顔を覗き込みながら尋ねている。 『あらあら、どうなさったのですか。転んだのですか。さぁ、服を脱いでくださいませ』  エルザはジェイミーに苛められた事を告白した。 『まぁ、なんてことですか。ジェイミー、許しませんよ』
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