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『お嬢様、ジェイミーはお尻が痛くて昨日は眠れなかったそうですよ。お嬢様に馬糞をぶつけた罰として、モリスさんにお尻を思いっきり鞭で叩かれましたからね』
『だつて、ジェイミーが悪いのよ。意地悪だわ』
ベルは、ぷっくりとした頬を緩めながら静かに微笑んだ。
『いいえ、あの子はお嬢様を守ろうとしたのですよ。雑木林に入ってはいけないと言われていますよね。メイドのリズはあたしの従妹でした。リズは十三歳の時に、森の中で見知らぬ男の人に襲われて亡くなりました。約束して下さい。一人でとこにも行かないで下さいね。そうでないと、お漏らしをした事をモリスさんに言いますよ』
『えっ』
お漏らしの言葉に反応して眦をキリリと上げる。
『ひどいわ。ジェイミーったら喋ったのね!』
恥しさに胸が焼け付いてきた。すると、温和な面差しのベルが困ったように囁いた。
『いいえ。一言も言いませんよ。服を触れば分かります。人一倍、怖がりなのに森に行こうとしましたね。本当はジェイミーと一緒に遊びたいのでしょう。今も、ソワソワしながら待ってますものね。いつも、強がってばかり。エルザ様は本当に可愛らしいわ』
クチュン。もっちりとしたエルザの頬をやさしく指で突いている。そして、からかうように顎をコチョコチョと触り出した。
『やだ、くすぐったいよ』
『お嬢様への罰ですよ。んふふ』
ベルは、エルザの赤毛に結ばれたリボンの先っちょで頬や首筋をくすぐり続けている。
『んふふ。お嬢様とジェイミーはいいコンビですね。早く、ジェイミーが学校から帰ってくるといいですね。おやつを一緒に食べるつもりなんですよね?』
そうだ。その通りだ。マカロンという珍しいお菓子をハンカチに包んでポケットに入れていた。緑色のマカロンがジェイミーで赤いマカロンが自分のもの。ううん、別にどつちでもいい。どっちも美味しいもの。
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