革命前夜

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 アリーを愛して心配する余りイカサマ薬剤師のカモになってしまった。薬の開発に大金を費やしてしまった。そいつは、搾り取るだけ搾り取ると新大陸に高飛びしてしまっている。 『誰でもいい。アリーを救ってくれるなら何でもする』   色々なものにすがりついたが、アリーの視力は衰えていった。その哀しさと焦りが父の心と人生を削り取っていった。投資の失敗や不作などの不幸も重なり、父は借金をするようになった。あの頃の父は絶望していた。だから、エルザは父の窮状を救おうとして、なりふり構わずに、あちこちのパーティーに出向いた。  エルザが二十二歳になった頃、屋敷の使用人は半分以下になっていた。  ウィリアムとの結婚は起死回生を賭けたエルザの一世一代の賭けだった……。 (お父様を救えるなら何でもしてみせると燃えていたわ。あたしは必死だったのよ)  しかし、婚約破棄となり、エルザが二十六歳の冬、父はスッカラカンになり破産してしまった。領地も屋敷も破産管財人に手渡してしまった。  それでも、足りずにタウンハウスも売却することになった。  銀行に家財道具を差し押さえられ、タウンハウスに置いていた母の形見のドレスや化粧台を競売にかけると決意した時は、さすがにガッカリして喪失感に打ちのめされて視界が歪んだ。  あの日の帰り道、父がポツリと呟いたことを昨日の出来事のように覚えている。 『ああ、もう、住む家も家具もなくなってしまったね。これからは外交官として海外で暮らすことになるよ。古い友人のお情けで、今の職を得られたよ。どうやら、わたしは未開の地に赴任することになりそうだ。エルザ、おまえはどうするんだい?』 『もちろん、お父様についていきます』  父親の身の回りの世話をする人が必要だ。  ということで、エルサは父と共に僻地で細々と暮らすことになったのだ。
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