革命前夜

『エルザ。また明日、仕事の後でここに来るよ』

『ちょっと、何をしに来るのよ？』

『おい、なんだよ、その顔は……。俺が来たら迷惑なのかよ！』

『言っておきますけど御馳走なんて作れないわよ！　いつもは、あたし達は蕎麦粥で済ませているんだからね』

『……そんなに困窮してるのかよ。それなら、俺が上等な羊肉と新鮮な果物を買って持ってくるよ。調理も手伝うぜ。何しろ、俺は、ガキの頃、厨房で料理長の補佐役をしていたんだ。野菜の皮剥きは、めちゃくちゃ得意だぜ』

　昔のようにくだけた口調で得意そうに教えてくれた。

『公務員になってすぐにサトウキビの島に派遣された時は、海辺のコテージに一人で住んで自炊していたんだ。スパイスを使った上手い肉料理を知ってるぜ』

『頼もしいわね。それなら昔のように働いてもらうわよ。ついでに、壊れた椅子も修理してよね』

　そんな軽口を叩いてから、また明日と告げて、馬で立ち去るジェイミー背中を見送ったのだ。本当なら、今頃は、二人で料理を作り終えて食べていたはずである……。

　どうしよう。グーッと腹か鳴っている。棚に大量の缶詰はあるけれど、それを食べるような気分ではない。でも、身体は食べ物を欲しがっているみたいだ。

　隣から揶揄するようにジェイミーか言った

「エルザ、今のは腹の虫か？」

「そうよ。どんなに哀しくても、お腹は鳴るものなのね……」

「食いしん坊だったもんな。おまえ、スミス夫人の農園の林檎を盗んだこともあったよな。木登りした時、ズロースのケツのところが破れてギャーギャー泣いたことを思い出すよ。ああ、そうだ。肥溜めに落ちた時もあったよな」

「そんな昔のこと言わないでよーーーーー」

　八つ当たり気味にジェイミーの肩を叩くと、ジェイミーが唇を尖らせた。