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ハグとキスでジェイミーを守ろうとした。そう、あの頃の二人の距離はそれぐらい近かった。
今でも、あの時に感じた心の痛みの結晶が残っている。ジェイミーか悲しむ顔なんて見たくない……。
「あれは傷付いているあなたに同情しただけなのよ。頬のキスは恋愛のキスとは違うわ。そういうのとは、ぜんぜん違うわよ」
照れ隠しの混ざったツンケンとした物言いに彼は苦笑している。
「知ってる。同情のキスでも嬉しかったのさ」
「えっ……。きゃっ」
いきなり、顎をつかまれて引き寄せられた。エルザはグラッと前傾姿勢になっており、頬に手を添えられていた。次の瞬間、ジェイミーによって唇を塞がれていた。
えっ。何だろう。螺旋階段の底に舞いながら堕ちるかのような感じがして、魂だけが別の世界に飛んだかのようだ。頭の中は真っ白に弾けて心臓がうるさいほどに暴れている。
(キスしているの? うそっ)
エルザはパキッと目を見開く。滑らかな舌がエルザの舌に絡まり息が止まりそうになった。
ジェイミーを強く拒否して突き飛ばしたいが、そんなことはできない。だって、彼は負傷しているんだもの。
(ちょっと、やだ。どういうつもりなのよ……)
焦りと共に首筋がじっとりと汗ばむ。やめて……。そう言いたいのに喉が痺れて上手く言葉にならなくて、心臓が、はみ出してしまいそうで、ふわっと体温が上昇している。
ドクドク。こんなの駄目。どうしよう! 頭の奥がカッと燃えている。身体が火照り鼓動が暴走して自分の鼓動は暴走している。
エルザは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ふざけないでよ!」
きっと、今頃、暴徒によって街を占拠されている。明日の朝になれば、ここにいても奴等に殺されてしまう。きっと、そうなんだ。
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