1・その後の二人

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 二人はニックの運転する車で通勤をしていた。装甲オフロード車で多少の攻撃や衝撃には耐えられる特殊な車だった。リリカとコウガが国際指名手配をされ賞金稼ぎに追われていた頃、身を守る意味でリリカの資産のゴールドを換金して購入したものだ。 「さぁ、コウガ。ここら辺から始めるぞ」 「ハイ。頑張ります」  停車した車内でニックとコウガが席を入れ替えた。 「まずシートベルト」 「ハイ」  4点止めのシートベルトを固定するコウガ。ハンドルを握った。 「ブレーキを踏んでエンジン始動」 「エンジン始動・・・」 〝ブオンッ、ブロロロロ・・・〟 「前後左右目視で確認」 「ヨシ、」 「発進」 「ハイ、発進!」  コウガはニックに帰り道、人気のない場所まで来ると運転を交代してもらい教習を受けていた。ネームレスであったコウガやニックは当時LTが無いために運転をしてみようもなかった。LTとエンジンが連動していたからだ。しかしニックは運転をしてみると最初からできた。これはセンスと言っていいだろう。  エリア51へ行くのにアメリカ大陸を横断する際にはニックが運転手を務めた。その時の車はギアチェンジを自分で行う旧式の車だったが、ニックはそれを乗りこなした。もともと運転ができなかったコウガは、記憶を失ってもそこは変わらなかった。自分からニックに運転の教授を頼んだのだった。何かが一つでも多く出来るようになりたい。そんな希望からだった。 「しばらく信号も交通量も少ないから運転してみろよ」 「ハイ」  緊張して運転しているコウガ。 「何かヤバかったらとにかくブレーキだ。しかし後続車がいる場合は減速して路肩に車を停車させてくれよ」 「ハイ」  ハンドルを握る手に汗が滲むコウガ。ふとリリカの事が気になった。 「ニックさん、リリカは運転が出来たのですか?」 「リリカはダメだ。あいつは何というか大ざっぱなんだよなぁ」 「へぇ、そうなんですか」 「本能的な感覚や運動神経は凄いんだけど、ルールとか細やかな操作とかダメなんだよな。〝あぁいいやもう、大丈夫、大丈夫〟ってタイプ」 「はぁ~・・・」  リリカの知らない一面を聞けてコウガは嬉しかった。
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