1・その後の二人

6/7
前へ
/206ページ
次へ
「今日はバーベキューだよ~」  帰ってきたコウガとニックを歓迎するリリカと子供達。 「お帰り、コウガ、ニックさん」  食卓には鉄板プレートとタコヤキ用鉄板が用意されていた。 「今日はメバルをいっぱいもらって来たぞ。最盛期だからな」  クーラーボックスをドンとテーブルの上に乗せるニック。 「5月は最盛期なんですかぁ?」  コウガも一から勉強中だ。 「おう、そうだよ。爺さんたちはサシミにすれば」 「いいねぇ。エンドウさん捌いてくれ。サシミがいい」  もと板前のエンドウに声を掛けるスズキ。子供達は調理もするが、さすがに刺身はまだ無理だった。それに刺身は食べない。 「エビもあるぞ。そのほか雑魚が色々。タコはタコヤキ用な」 「やったぁ」  子供達はタコヤキが大好きだ。 「リリカ、もっと油つけなきゃ貼り付いてダメだぞ」  リリカが焼くタコヤキに子供達が集まって見ている。ニックは心配だ。 「え? もう入れちゃったもん」 「あーあ」  子供達も眉を潜めて見ている。 「回してみる」  棒で突くがまだ早過ぎだ。それでも焦げ付き始めていた。 「熱が強いよ、リリカ」  コウガもアドバイスを入れる。 「え? そう?」  ガチャガチャと掻き回すリリカ。生地が焦げ付くだけで球体にならない。 「ダメだ。子供達、焦げ付いたのをスプーンで取れ。やり直し、やり直し。次はしっかり油を塗れよ」 「ごめんなさい・・・」  うまく火加減を調整できないリリカ。申し訳なさそうに下を向く。 「いいんだよ、リリカ。何事も勉強、勉強」  優しくコウガはリリカの肩を叩いた。  自分はいつも調理したものを食べさせてもらっていたのだろうか。何も思い出せないジレンマがまたリリカを襲う。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加