1・その後の二人

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 結局ニックがタコヤキを手際よく焼いてくれた。さらにそのまま魚やエビを鉄板の上に乗せて焼き始めた。 「リリカ、頭から全部食べて~」  サンディが焼いていない魚をリリカの前に突き出してせがむ。 「どうして頭から?」 「リリカは何でもそのまま食べちゃうんだよー」  ニコニコとして言う。他の子供も笑っている。 「サンディ、もう言わないの。今はやらないよ、そんなこと」  女子最年長のサヤがサンディに注意を促した。 「だってリリカはシャコもカニもそのまま殻も食べるんだよ」 「サンディ」  サヤは事情が分かっている。とにかく昔のリリカの様子を言うことは避けていた。 「私はそんな下品な人間だったの?」  混乱するリリカ。だから調理方法を知らないのかとも思った。 「まぁリリカはもともとレプ・・・」  そこまで言って口を噤むニック。口が滑るところだった。 「何、ニックさん。私はもともと何なの?」 「いや、何でもない・・・」  バツの悪そうなニックを見てキョトンとしているコウガ。  リリカにレプティの血が入っている事は教えていない。いずれは話す時が来るのだろうが、まだそれは刺激が強過ぎると思い明言していない。もちろんコウガもそれを知らなかった。  リリカは自分の育ちが悪いのだろうかと不安を抱えていた。料理もできない、生で頭から魚を食べる、ケンカが強い、イルカのように泳げる。皆から聞く本来の自分は野蛮人のようなイメージしか浮かばなかった。ますます不安は募るのだった。
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