プロローグ

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 人類を管理するスーパーコンピューター「ビースト」の開発をレプティリアン(以降レプティ)に強制されたケンヤ・タチバナ博士。彼は死んだ自分の娘のクローン、エマを極秘裏にレプティが管理する月面基地ベース・ムーンでつくった。その目的はビーストを破壊させることだった。その際に攻撃能力が高いレプティのDNAを掛け合わせた。そのためエマはレプティとして英才教育を受けて育つ。またベース・ムーンには環境適応実験と食糧として強制連行されたネームレスの人間達がいた。その中の少年コウガと幼いながらもエマは恋仲となる。二人とも6歳の時だった。  一緒に月に住むコウガの母親アンリはレプティが古代に抹消した人類の能力が備わったオリジナル・ヒューマノイドという特異体質の人間だった。これを知ったタチバナ博士のチームはアンリのDNAから人類が覚醒する新薬、染色体復元剤を開発し、月で生まれる新生児たちに投与した。それはビーストの破壊を実行するエマをサポートする人間が必要だと考えたためだった。彼らをMC(ムーン・チャイルド)と呼んだ。そしてこのMC達が繋ぐ新人類の誕生がレプティに支配された地球を解放する糸口となる望みを託してタチバナ博士は息を引き取ったのだった。やがてベース・ムーンでの試みに成果を見い出せなかったレプティは人間の記憶を消して地球に帰還させた。エマとコウガ、アンリはこれにより離散させられた。  ジャパンCAオーサカ地区でコウガは18歳となり、友人のニック、子供や老人達と共同生活を送っていた。ある日コウガは漁の仕事中に漂流してきた少女「リリカ」と出会う。転送による記憶喪失のまま出会ったリリカはコウガらと生活を始める。やがてリリカは自分が政府のSS(シークレット・サービス)機関の小隊長エマ・タチバナであり、月で生まれたMC達を捕獲する「ミッション・リリカ」を自ら志願し、コウガを捕獲に来たことを思い出すに至る。リリカと名乗ったのは僅かにあったこの記憶のためだった。そのままこの名前で過ごす。  コウガ達との暮らしはリリカの任務を遂行する妨げとなっていく。闘争に明け暮れるレプティとは対照的な人間達の穏やかな暮らしこそが本来あるべきものと悟るのだった。そしてコウガへの想いと自分の任務との葛藤に苦しみ、コウガに自分がレプティである事を告白する。しかし任務に背いた事でリリカは追われる身となり、コウガは総本部のあるブリュッセルへ強制転送されてしまう。  コウガを救うべく決死の覚悟で単身ブリュッセルへ乗り込むリリカ。友人デビーの協力を得て幾重にも渡る追撃の果て、コウガらMC達を救出する。そこで初めてコウガはリリカが幼い頃に生き別れたエマだという事、自分が月で育った能力者MCである記憶を取り戻す。そしていよいよリリカはMC達とビーストの破壊へ挑む。遂行不可能とも思える障壁を乗り越え、多くの仲間の犠牲の上にこれを成し遂げたリリカとコウガ。しかしそれは最後にリリカ自らが犠牲になって完遂したものだった。リリカの体内にはビーストの動力エネルギーに触れることで大爆発を誘発出来る起爆剤が埋め込まれていたのだ。半年後、傷心に暮れるコウガの元へ突然帰ってきたリリカ。彼女は生きていたのだ。奇跡の再会を果たしたリリカとコウガ。リリカによると高能力のMCイサムに助けられたという。  このリリカの一連の動きと、タチバナ博士の仕事の傍らでずっと関わっていたレプティの男がいた。ロブ・シュタインというリリカのSS時代の担当通信士だ。ロブはタチバナ博士のチームに所属していながらも政府直属の諜報員だった。ビースト開発者としての名誉をタチバナ博士に奪われたロブは、リリカによるビーストの破壊を影で企てていた張本人だった。それは自らが設計している新型ビーストに切り替える準備があるからに他ならなかった。
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