2・メン・イン・ブラック

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2・メン・イン・ブラック

 カナダCAオンタリオの近郊。ナイアガラの滝も近い自然に恵まれた緑豊かな風景。その森林の合間を縫うように巡らされている山道を軽快なスピードで駆け抜けるバイク。乗っているのはブロンドの髪をコンパクトに結んだ女。相当になれたハンドル捌きとコーナリングはセンスを漂わせる。  バイクは森林を抜けるとちょっとした街並みに差し掛かった。そこでようやく減速を始める女のバイク。何軒か寄り添うように建つ高級住宅の一棟に辿り着くと、駐車場になっている1階部分へ吸い込まれるように入っていった。  女はバイクを一角に停め、周囲を見渡しながら小走りに階段へ向かった。どこか何かを恐れているようにも見える。2階が入口のようだった。ドアの前に立ち幾つかあるボタンの一つに軽くタッチをするとドアの上から下へ向かって青い光が瞬時に下りた。〝フォンッ〟と耳に心地の良い音がすると、ドアは開錠されたようだった。全身認証スキャン・オートロックだった。 〝カチャ〟静かにドアを開ける。 「アキラ~、戻ったわよ」  女は結んだ髪をほどいて手櫛でパサパサと馴染ませる。 「おう。どうだったレナ」 「やっぱり同じよ。間違いないって」  ニッコリとするレナ。目を大きく広げるアキラ。 「あなたのDNAも一致していましたよ。ハイ、証明書」  と一枚の用紙をアキラに渡すと、首を振るアキラ。 「いいよ、そんなもん見せなくたって・・・。つまり俺は・・・・・・」 「パパになるってことねっ!」 「だよなっ! だよな~っ!」  と満面の笑みでレナを抱き寄せるアキラ。その腕に抱かれ満足そうに目を瞑るレナ。今日は病院で妊娠検査をしてきたのだった。検査薬では既に結果が出ていたが、確認の意味でもう一度正式に病院で診てもらったのだった。ヴラドの子供を身籠っていないだろうかと心配した時期もあったが、レナ自身が極秘に避妊をしていた効果があった。もうその不安期は脱した。  二人は今ニューヨークを離れ、ナイアガラの滝を挟んで北に位置するカナダCAのオンタリオに移り住んだ。住まいは非常に整備の整った高級住宅だ。レナが乗っていたバイクもBMW社の最新モデル。二人に何があったのか。
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