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中盤に差し掛かり、ミドルテンポの曲が入る。俺はやっと椅子に腰を落ち着けて聴き入る。速いだけじゃねぇんだな。こういう曲でもすげぇ丁寧に叩ける人だわ。
腕を組んで感心してると、隣から肘をつつかれた。
ちらっと横を見ると、俺と同じように前を見てる宵闇が、スマホを俺の肘に押し付けてる。
何だ?
スマホの画面が明るい。ちょっと覗き込むと、それを俺の前に差し出して来た。
真っ白い画面に、手書きの黒い線が走らせてある。
…そう来たか。このバカ。ほんとタイミングってもんを知らねぇな。
俺はつい笑っちまう。
可愛いわ、お前。必死か。
画面に書いてあったのは、「すきだ」っていう中学生みてぇな字。
聞けなかったけど、見ちまったな。
知ってたわ、そんなん。
俺は画面の下に指を伸ばして、ペンの色を赤に変える。
宵闇は、俺が何すんのかって手元を見てる。
人差し指の指先を滑らして、「すきだ」の上から画面いっぱいにでっけぇハートを描いてやる。
宵闇は半分立ち上がって画面を勢いよく二度見して、凝視して、俺の顔を見る。絶対「えっ!」って言ったな。聞こえねぇけど。
そんなにびっくりすることかよ。マジで鈍いな、お前。
ちらっとヤツに目をやると、口が塞がってねぇ。イケメンが台無しだぞ?
Hate or Fate?
その問いかけ。
俺の答えはFateしかねぇよ。
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