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 随分と時間をかけてセットして、前髪もやたらまっすぐに固められる。  ガチガチに固められた俺の髪は、首を動かすと自分のもんじゃないみたいに不自然に揺れる。 「よし、完成だな。後は自分で着替えろ」 「あいよ」  顎でかけてある衣装を指し示すと、ヤツは椅子に座る。マネージャーはいつの間にかいなくなっていた。  俺は立って行って、衣装を手に取ってみる。これ、どういう構造になってんだ。 「おい宵闇、わけがわからん、この服」 「見たらわかるだろ。これはストールだ。これは上から羽織って…」  もう一度立って来て、一つずつ解体しながら説明してくれる。意外に親切だな。パーツごとに分けた衣装は順に机に並べられた。 「この順で着ていけばいい」 「おう」  俺は着ていたTシャツとジーンズを脱いで、まずはボトムに手を伸ばす。 「夕、脱げ」 「は?」 「パンツだよ。脱げ」 「ああ? セクハラか?」  何だってパンツまで脱がなきゃなんねぇんだよ。 「お前は本当にバカだな。よく見ろ。そのボトム、サイドが透けてるだろ」 「ん? ああ」  言われてみれば、確かにサイドがレースになっていて透けている。 「パンツ履いてたら、見える」 「ああー!? 何だこのふざけた服」 「いいから脱げ」  渋々パンツも脱いで、ボトムに足を入れる。風呂屋の脱衣所か、ここは。股間が相当気持ちわりぃ。  それから、端から順番に服を拾い上げながら着ていく。最後にストールをかけて、着替え完了だ。 「足のサイズは」 「26」 「ふん…」  窓際にいくつか並んでいる靴やブーツから宵闇が選んだのは、エナメルの先がとがったブーツだ。 「これを履け」 「へい」  言われた通りに足を入れる。サイズ感はぴったりだ。ただ、踵がめちゃめちゃ細くて高い。ピンヒールってヤツか。 「歩きにくいな」 「写真を撮るだけだ。文句言うな」  何かちょっと笑ってんな。ムカつく。 「じゃあ、カメラテスト行くぞ」  ドアに向かいながら、人差し指で俺を呼ぶ。ヴィジュアル系のヤツって、普段からこんなキザなのか?
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