言えなかった言葉

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言えなかった言葉

カランカランと軽快なアルミの音。   俺を見るにこやかな顔。 俺は言いたいのだ。たった2文字を。 「まぁあっ!」 「んー?どうちましたかー?」 また、言えなかった。いつか、言えるだろうか。 「お腹空いたかな?」 「んー!うっぐっうっぐゃあああ」 言いたいことが言えなかった。 なんと悲しいことか!なんと悔しいことか! 「あららら、はい!ほい!ママですよー。ご飯にしましょうかー?」 「んィァッ!」  今は乳など要らん! 俺は早く言いたいのだ! 何故言えぬ!ま行の1番上2つだ! そのくらい分かっているのだ! 「んぎゃあああ!ぁああーーー!」 「どうしたのー大丈夫よー」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「かずや!お弁当忘れてるよ!」 「おお!サンキューババァ!」 「こら!ババァじゃなくてお母さんでしょ!全く昔はンマァンマァッて可愛かったのに…!」 「うるせぇ!気色悪い!そんな小さい頃なんて覚えてねぇーよ!」 ンマァンマァッだと?!俺がそんなこと言うわけないだろ!  ほんと、うざいったらない! ……まぁ、でも、こうやって毎日朝早く起きて作ってくれる弁当には感謝してる。美味いし。 「……いつもありがとな、母さん。」 「んえ?なに?今なんか言った?」 「行ってきマース!」 俺は、勢いよく玄関の扉を開けた。 ーーーーーFinーーーーーー
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