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彼女の秘密
「よし、今日こそ言うぞ。」
両手で顔をパーンッと叩いて気合いを入れた。
3月の春休み。彼女と公園で待ち合わせ。今日は大事な話がある。早く来ないかな。
キキーッと自転車のブレーキの音がした。
「お待たせ。」
彼女が到着して、ニコッとうれしそうな笑顔を見せた。
「よおっ。」
僕もたまらず笑顔になる。クシャクシャな顔になってるんだろうな。知り合いには見られたくないな。
彼女は颯爽と自転車から降りた。脚が長い。ちょっと筋肉質な体型で太ももがムチムチしている。はさまれたい。
降りたはずみで大きい胸がユッサユサっと上下にゆれた。
なんて素敵なんだ。デニムとニットのシンプルな服装がグラマーな体型を強調させる。こんな人が僕の彼女だなんて言っても誰も信じないだろうな。まあ彼女と言ってもまだキスもしていないんだけど。
一緒にベンチに座った。くっつくか、くっつかないかのギリギリの距離だ。ホントはべったりくっついてイチャイチャしたい。
彼女が長い髪を耳にかけながら、話し始めた。
「うちの学校ね、明日が卒業式なんだ。」
「そっか、うちもだよ。一緒の高校だったら良かったな。卒業式の後そのままお祝いできたのにな。」
「……そう……だね。ねえ4月からどうするの?」
「就職だよ。やっと決まったんだ。でも高校と違って会社ってつまんなそうだなあ。」
「そうなんだ。でもお金稼げるからいいじゃん。」
「うん。そういえば卒業後はどうするんだ?」
「えーと私は…………まだ学生だよ。」
「大学行くのか。小学校からエスカレーター式の学校だもんな。」
「う……うん、そう。受験しなくていいの。ねえ、それよりもうすぐ付き合って半年だね。」
「そうだな。初めて会ったのはうちの高校の文化祭だったな。懐かしいな。」
「あの日、お姉ちゃんに誘われて遊びに行ってよかった。」
「お姉さんとはぐれて半べそかいてたよな。声かけてよかったよ。」
「フフ、スマホの電池切れちゃうし、初めて行くところだったから緊張しちゃった。」
生意気そうな顔つきとグラマーな体型に反して、ちょっと幼いところがかわいいんだよな。
「あのさ、今日話したいことがあって。」
「えっ何? 実は私も話したいことあるの。」
「そうなの? でも僕から言わせて。大好きだ。」
「フフ。ありがと。私も大好きだよ。って、いつも言ってるじゃん。」
「そうなんだけど……。あのさ……高校卒業したら結婚しよう。」
「え……ごめんっ!」
「ガーン……そんな……何でダメなの?」
「あのね……私、言ってなかったことがあって……。」
「まさか……二股かけてるとか?」
「ううん、違う。」
「じゃあ、なんで? どうして?」
「怒らないで聞いてくれる?」
彼女は神妙な面持ちだ。
「…………わかった。怒らない」
「……やっぱり、言いづらいな……。」
「何だよ……。僕に言えないことなのか?」
「だって嫌われたくないから。」
「嫌ったりなんかしないよ。」
「ほんとに?」
「うん。」
「はぁ……やっぱ言いづらい……。」
「早く言ってくれよ。落ち着かない。」
「うん……。んーと……んーとね……。」
「ハッ! 実は男だとか?」
「…………だったらどうする?」
「え……。そう……だな……。今まで考えたことなかった……。そっか、男だったのか……。」
僕は男の太ももに挟まれたいと思っていたのか……。ショックだな……。
ハッ! いかんいかん。こんな顔をしては彼女、いや彼氏を傷付けてしまう!
平常心、平常心っと。
ん? なんで男なのに、あんなに胸が大きいんだ?
「なーんてね、男のわけ……」
「なあ、そのおっぱいどうなってるんだ?」
「は?」
「ちょっと触らせて。」
男なのにこんなに巨乳ってどういうことだ。どうしてユッサユサ、ボインボインするんだ。
彼氏の大きなおっぱいに手を伸ばす。男のおっぱいってどんな感じなんだろう。女のおっぱいも揉んだことないけどな。
何事も経験だな。ドキドキワクワクだな。
「えっ……やめて!」
バチンッ! 頬に平手打ちをくらった。
「痛え!」
「急に何よ。バカあ!」
「あー、ごめんごめん。男のおっぱいってどうなってるんだろうと思って。」
「男じゃなーーい! 女なの! 勝手に勘違いしないで!」
「えっ……! じゃあ僕は女の子のおっぱいを触ろうとしてたのか……。」
「もう……ひどーい。」彼女は半べそをかいてる。
「ごめんごめん。泣かないで。触ってないんだし。」
「グスン……もう大丈夫。」
「男じゃないなら何かな?」
「えっとね、実は私、高校生じゃないの。」
「エッ、そうなの? 中卒ってこと? そっか……いろいろあるんだな。そんなこと気にしないよ。学校行ってるなんてウソつかなくてよかったのに。」
「優しいのね……。って、ちがうちがう!
あのね、私小学生なの。」
「へ? 何言ってんだ?」
「老けてるから、よく高校生とか大学生と間違われるけど12歳なの。」
「えっ、でも明日卒業式って……。」
「小学校の卒業式なの。」
「あっ、そういうこと……。」
ヤバイ、さっき胸揉まなくてよかった……。
「12歳って聞いて嫌いになった?」
「ならないよ。驚いたけど。」
「よかった。だから結婚はまだ無理。16歳からでしょ。」
「えっじゃあ、16過ぎたらオッケー?」
「もちろん。私はね。でも親の許可がいるよ。4年後、立派な22歳になってないと結婚はできないよ。」
「わかった。結婚する為に頑張るよ!」
「うん、しっかり働いてね!」
キスもパイモミも結婚までおあずけかなあ……。
おしまい
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