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2.彼女
「お散歩ですか?」
声をかけたのは私だった。
雪のような白い肌で、綺麗な顔立ちの彼。
池の周りに張られた柵に寄りかかりながら白鳥を眺める姿が、絵に書いたようなワンシーンで思わず見取れてしまった。
「……え?ああ、白鳥を見に。」
綺麗な顔立ちだから余計、愛想が無いように感じるのだろうか。
いや、むやにみ話しかけた私が悪いのか。
「白鳥って、確か渡り鳥でしたっけ?冬に来るみたいだけど、こんな寒いところにわざわざ来なくったっていいのに。」
たいした知識もなく、人から聞いたことがあるような、無いようなことをベラベラと話した。
すると、彼はフッと笑って私を見た。
「白鳥は、シベリアとかもっと寒くて遠い場所から日本に来るんだ。白鳥にとってはここが居心地の良い気温で、餌もあって幸せらしい。ところで、君は散歩をしに?」
恥ずかしいしムッとするけど、彼からしたら不審なやつだろうに会話を続けようとしてくれたので、笑ったことは咎めないことにした。
「おまじないです。」
「おまじない?」
彼は、眉間を近づけて首をかしげた。
構わず続ける。
「そう。恋のおまじない。この池を3周すると恋が叶うって。」
彼はそれを聞いて声高らかに笑った。
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