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4.彼女
「そんな笑わなくても……。」
大学生になってまで、そんな非科学的で非論理的なことを信じるなんて、バカげているということは私だって分かっている。
でも、おまじないは、おまじないだ。希望くらい持ったっていいではないか。
むくれた私に気がついたのか、彼はある提案をしてきた。
「俺もそれしていい?俺も願いが叶うように。」
先ほどのバカにしている雰囲気ではなかった。
「恋のおまじないでいいならいいですけど。」
「さっ、はじめよう。3周歩けばいいの?」
こうして、私と彼は、各々なんとなく反対方向で池の周りを3周した。
すれ違う時は、1周目は何だか恥ずかしくて顔を背けたが、2周目は互いに微笑み、3周目のゴールではお互いに何が面白いのか分からなかったが笑い合った。
「どう?好きな人は目の前にあらわれた?」
彼は、また、歩き始める前と同じように柵にもたれかかった。そして、笑って出切ってしまった息を吸うため深呼吸をしていた。
「ダメでした。そちらは?」
私にその頃好きだった人などいない。好きな人が出来ますようにと祈りながら歩いたのだ。最近友達に彼氏が出来て羨ましくなり、おまじないの話を聞いて実践してみたくなったものの、対象がいなくてモヤモヤしていた。モヤモヤにウンザリしたところに、彼に目がとまり、彼に話しかけたのだ。
「そう、残念だったね。俺のはどうだろうな。まあ、そのうちわかるさ。」
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