5.彼

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5.彼

「別れよう」 俺が眠気でうとうとする中、俺の髪を撫でながら、俺ではない遠くを見つめながら彼女はそう言った。 俺が頼りないばかりに、金が無く、なかなか外に連れ出してやれないばかりに、彼女は俺に嫌気がさしたのだと思った。そうなら彼女を引き留める術はない。 彼女が俺のために別れたということ。 俺は気づきもしなかった。 1歩踏み出す度に全身が火照っていく。 まだ朝も明けず肌寒いはずなのに、体は暑さを感じていた。   3周目。 少しゆっくり歩いてみる。 もう少し。あと少しだ。 緊張なのか、不安なのか、動悸が激しくなる。
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