1人が本棚に入れています
本棚に追加
7.彼
彼女はゆっくり歩く俺を見つめながら、怒っているのか下唇を噛んでいる。
「あと5歩。」
「だめだよ……。」
「何が?俺とまた付き合うのが?」
語尾は声が上ずった。動悸が激しくなる。
彼女は肌寒いのか両手で自分を抱きしめるように腕を組んだ。
「あと、2歩。」
たかが数百メートルの池の周り3周でここまで息が切れるとは、運動不足が祟ったな。
「付き合えないよ。」
あと1歩というところで、彼女は言う。
「…どうして?」
彼女は自分を抱きしめながら、俯く。
「私はあなたに……」
俺も意地悪く最後の一歩を踏み出さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!