『we're Men's Dream』 -type AAA-②

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『we're Men's Dream』 -type AAA-②

 マコちんに弟が出来たとパパから聞いた。どんどん疎遠になっちゃってさびしかった。「マコちんが吹奏楽クラブに入るらしい」、と、四年生に進級する前に、これもパパから聞いた。いまは学校がちがっていても、私も吹奏楽をやれば、いつかまた仲良くできる機会がくるかもしれない。そう思った私は、四年生になったときに、マコちゃん同様、吹奏楽クラブに入った。なんとなく名前の響きがかわいいので、私はピッコロを選んだ。  中学は、なんと、パパから前もって教えてもらっていた、マコちんと同じ女子中学校に入ることができた!  マコちんも再会をこころから喜んでくれた。私の希望通りふたりそろって吹奏楽部に入部。登校も学校帰りの寄り道も一緒にできるようになって、とてもうれしかった。マコちんは相変わらずコロコロとしたかわいらしい体形で、入学時、一四〇センチに満たないくらいの背の高さ。一方私は同い年にして、すでに一六〇センチ近くまで背が伸びていた。ママンの血は強い。高い身長に比べて、ピッコロがあまりに小さく似合わない、と同級生に言われたことが気になってしまい、私は身の丈(物理)に合った、テナーサックスに乗り換えた。大きさと見た目から入ったけど、音も大好きだった。びりびりとしびれるような重低音をのりこなしていると、なんだかふわふわと、体の芯のほうが気持ちよくなった。  中学二年の二学期終わりくらいに、ノーパソで動画サイトを見ていると、レコメンドのところに、日本のロックバンドが表示されていた。なんとなしに視聴した私は、いつしかロックのもつ熱量と迫力に取り込まれていた。特にエレキベースの重低音が格別で、私好みの演奏を探しては、何百回も繰り返し聴いた。吹奏楽やテナーサックスに飽きたわけではないけど、他人が作った曲以外もやりたい、できればロックがいいなあ、とぼんやり考え始めていた。  中学二年生の冬前、マコちんに相談をしてみた。 「ねえ、マコちん。部活もたのしいけどさ、ちょっとバンドやってみない?」  私がコードレスのイヤホンを渡すと、マコちんは曲を聴き始める。ひざに指先を当ててリズムに乗っている。気に入ってくれたのかなあ? 「これって、ロック?」 「そう。吹奏楽で誰かが書いた曲やるのもいいんだけど、バンドで自由にオリジナルやるほうが楽しいかなって思ったんだ」 「ロックでサックス吹くの?」 「ううん、この機会に別の楽器もいいかなって。ギターもカッコいいな、と思ったけど、背ばっかのびちゃったから、背丈に合いそうなエレキベースを狙ってる。テナー・サックスも低音楽器だし、応用できるかなあって」その日はひととおり、私のお気に入りナンバーをマコちんのスマホに送って別れた。  翌日、さっそくマコちんが一緒にバンドをやってくれることになった! これでオリジナルもできるし、マコちんといっしょにいられる時間も増える。 「ところで、ヌイちゃん。まだエレキベースもってないよね?」 「うん、これから買うつもりで、おこづかい貯めたんだっ」 「おとうさんの知り合いが、御茶ノ水で楽器屋さんやってるんだ。今度、見に行ってみようよ」  私はうんうんと笑顔でうなずいた。
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