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『we're Men's Dream』 -type AAA-①
なんで朝っぱらから、山の中でおフロにつかっているんだっけ? おフロは最高に気持ちいいし、目の前の感触もやわらかでここちよい。
いっしょにドラム缶のおフロに入っているのは幼馴染のマコ(真琴)ちん。彼女のふくよかな胸が、私のあばらあたりと密着している。
「マコちん、せまいよ」
「……」
「また、いちだんとサイズアップしたんじゃない?」
マコちんより頭半分くらい背の高い私は、マコちんの胸を見おろしながら、そう言った。
「ヌイちゃんもまた、背、のびたね」
そう。今年二十歳になったのに、いまだにじわじわと背が伸び続けてる。
気持ちのいいお湯につかっているせいか、頭がぼーっとして、思考がまとまらない。
でも、おフロ気持ちいいし、まあいいかなあ。
フランス人のママンと日本人のパパとのハーフとはいえ、ママンの血筋が色濃く出ている私は、体型も顔立ちも日本人ばなれしている。
私は小さいころから「ヌイ」とカタカナで名乗っている。パスポートと学生証以外は、すべてそれで通していた。答案用紙もTSUTAYAのカードもヌイ。なんでかっていうと、私は見た目が完全にフランス人なので、そのほうが相手も理解しやすいから。戸籍上の名は「埜(ぬい)」と書く。先祖代々の家業の大工をしているパパとファッション、アパレル業界のママンがつけてくれた。地鎮祭のときに土地の神さまを祭るために固めた土と、機織りの横糸を走らせる器具の絵を組み合わせた漢字だ、と聞いたことがある。名前は、がっつりとママンとパパのハーフだったけど、見た目は完全にママン寄りだった。
音楽との出会いは小学校の頃。幼稚園の頃に仲が良かったマコちんとは別の小学校に入っていた。外見が目立っていた私は、周りから憧れられていたけど、でも、どこか一歩遠巻きに見られていた気がする。マコちんよりも仲良くできる友だちはひとりもできなかった。
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