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メガネをかけた短髪の女性だった。
女性の視線を追って振り返ると、馬に乗った騎士の一団が道の真ん中を歩いてきていた。顔以外の全身を覆った鎧の胸には十字架が描かれている。
陽に煌めいて鎧が眩しく光った。一団は全員で五人。
真ん中にいる騎士の鎧だけ、他より装飾がつけられ豪華だ。
歩いていた人々は彼らのために道を開け、通り過ぎるとまた元に戻った。
「この人たちは、何?」
腕を引っ張ってくれた女性に聞いた。
「警備の騎士団だよ。真ん中にいるのが兵長さ。普段は街中には現れないけど、事件かな?」
「ほお。けいびのきしだん。なんかカッコいい」
「そうか? 私はそうは思わないけどな……。それより、騎士団のことも知らないなんて、あんた旅行者かい?」
「えっと、まあそんなとこ」
「ふ〜ん。この街の見所なんて大してないけどな。ま、良い旅を」
去ろうとする女性をアンナは引き留めた。
「待って。バルトロって人の店知らない?」
「ああ、バルトロさんなら、この道まっすぐ行くと右に橋が見えるから、その反対側さ。あんたバルトロさんとこ行くなら、これ渡しといてくれない?」
クルクルに巻かれた紙を紐で止めたものが渡された。
頼んだと一言言って彼女は去っていった。
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