1・マリア

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彼女に言われた通り、通りをまっすぐに歩いて行くと右手に大きな弧を描いた石造りの橋が現れた。橋の向こう側にはいくつもの尖った屋根を持つお城が見えた。橋の反対側に立ち並ぶ店の中で、一番橋に近い店に入った。 食料品がメインで置かれ、少し雑貨も売っている。 お客も店の人も居らずがらんとしている。 「ごめんくださーい」 一声かけると、店の奥から茶色い口髭を蓄えた気の良さそうなおじさんが出てきた。 「なんだい嬢ちゃんお使い? 今日は今朝仕入れたこのコータケってのが一押しでね! この辺じゃ取れない貴重なきのこなんだ。お肌にもいいよ! どうだいひとつ」 そう言っておじさんはコータケを一つ差し出してきた。 「あ、あの。私、アンナ。アンナ・ロッシ」 「おう、そうかい。俺はバルトロ、ここの店主だ」 マリアには、名前を言えば伝わると言われていた。同じ名前だけど、この人ではないのだろうか。おじさんはコータケを持った手を動かさない。 「ん、ちょっとまて。ロッシ……」
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