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1・マリア
姿見の前で帽子を整え、身嗜みをチェック。髪はとかした。
肩掛けの小さなポシェットも、お財布も持った。ブレスレットもバッチリ。
「お母さん、行ってきます!」
車椅子に座っているマリアに声をかけた。
「待って、これしていきなさい」
マリアが襟のついたチョーカーを取り出した。
「何それ?」
マリアのもとへ近寄る。
「ちょっと早いけど、プレゼント」
マリアがチョーカーを開き、首を出すよう促す。
「え! ありがとう!」
マリアの前で屈み、後ろを向いた。
チョーカーの前には揺れる赤い石がついている。
「綺麗、お母さんの髪と同じね」
赤い石を片手でいじりながらアンナが言った。
「あなたの髪も綺麗よ」
「でも魔女っぽくない」
「何言ってるの、そのおかげで貴女は街に出られるんでしょう?」
「そうだけどぉ」
マリアはチョーカーを締めると肩をポンと叩いた。
「はいできた。行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
「気をつけてね、寄り道しないで帰ってきなさいよ」
母の声を背に扉を開けると、部屋の中に草木の香りがブワッと入り込んできた。
「わーかってるよぉ」
今日もいい天気だ。
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