動き始めた互いの想い

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「じゃあ彼女からの返事待ちね。……待ってるだけで勝てるわけではないのだから、今が押す時なんじゃないの?デートの約束くらいはしたのでしょうね?」  吉無田君がそこまで気が付かないとは分かってるけれど、これくらい進んでしなければライバルに負けてしまうわ。 「……実は、従兄弟に屋内プールに誘われたんですよね。従兄弟と従兄弟の婚約者と彼女と僕と……彼女に気のある男性で、って。」 「何、それ……?貴方の従兄弟メチャクチャな事を言ってくるのね。」  今は1月なのにわざわざプールに行きたいなんて私には考えられないわね。  癖があるとは聞いていたが、ここまで酷い事をしてくるような従兄弟だとは思わなかった。本当にこの温厚な吉無田君と血の繋がりがあるのだろうか?  吉無田君もそうだろうが、そんな状況では彼女も好意を持つ男性とやらもどう考えても楽しめそうにない。もしこの状況が楽しめるとしたら、その従兄弟だけだろう。 「でも、その日って2月2日なんです。……だから僕は不参加です。」 「どうして2月2日だと不参加なの?日曜でしょ、何か用事があるの?」  私たちの会社は、土日祝日は休みだから問題ないはず。楽しくはなさそうだけれどライバルに負けたくなければ行った方が良いと思うのだけど。 「灘川さんは不参加なんですか?2月1日と2日は社員旅行ですよ?」  吉無田君はスマホのスケジュールを開いて見せてくれる。私は手帳を使うのに、歳の差を感じるわ。 「……嫌だ、忘れてたわ。」  地味子の私にとって、社員旅行なんていつも雑用係でしかない。ほぼ強制でなければ絶対に行かないのに……  今年も渋々参加に丸を付けたのだったわ。ああ、後二週間しかないじゃない。
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