左手に握られるもの

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「偶然、会って……偶然だったのかな?まあ、もうそれはいいや。偶然会って、『久しぶりー』って、近づいてきて、左手を握られたの。そして、すぐに耳元で『ごめんね……』って呟いて、去って行っちゃった。その声がすごく思い詰めた感じで、どうしたんだろうって」  淡々と話す綾那を拓巳は悲痛の表情で見つめる。 「それでね、なんだか左手が重いなって思ったら、くっついてた」  そう言って、綾那はまた拓巳に左手にあるその石を見せた。  拓巳は、再び手を伸ばすが、すぐに綾那の手の中に握られてしまう。 「“呪いの石”なんて本当にあったんだね。びっくり」 「ただの……噂だと思ってた。都市伝説みたいなものだって……」 「うん。そうだね。でも、現実にこの石は私の左手から離れない。ねえ、拓巳、呪いの終わらせ方って知ってる?」  拓巳は、呪いの終わらせ方も聞いたことがあった。しかし、その方法は…… 「知ってるんだね」  拓巳の微妙な表情を見て、綾那は拓巳も知っていることを察した。  呪いを終わらせる方法、それは『石を持った者が石を持ったまま死ぬこと』。  そして、綾那の覚悟を決めたような口調で拓巳は綾那がしようとしてることを察した。  拓巳は綾那に抱きついた。 「拓巳……?」
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